1.コンサルティングが実践上で目指すもの

しばしば、コンサルティングは《問題解決の支援や指導》だと言われることがあります。そして、そう捉えてしまうために、非常に難しいもの、あるいは面倒なものと感じられてしまうのだろうと思います。  
一方、《問題解決がコンサルティングだ》と考えるなら、ソリューションと呼ばれるノウハウパッケージがあれば、コンサルティングが可能だという考えも出てしまいそうです。
しかし、コンサルティング手法を士業ビジネスに活かそうとするなら、《少し違うところ》に目を付けるべきなのです。

2.パッケージ的ノウハウが持ちがちな限界

たとえば、パッケージ的ノウハウは、教える側にも教わる側にも便利そうに見えます。そして、システムやマニュアルがあれば、とても使いやすいようにも感じられるのです。
しかし、どんなに優れたパッケージでも『使いこなせない』というユーザーが出て来ます。そして、その使いこなせないことが《新たな問題》になってしまうのです。高度なシステムを導入した時を想像すると、イメージしやすいはずです。それは、せっかく買ったシステムを《どう活用するか》で、関係者が悩み始める様子です。
ただ、なぜそんなことになるのでしょうか。

3.自社問題の《具体的な把握》の方が大事

それは、パッケージ自体の問題と言うより、そのパッケージが示唆する解決法と、自社の《現実の問題》がマッチしないからだと思います。あるいは、企業や組織の経営陣が、十分に自社の問題を把握せずに、解決イメージのみに飛び付いたからかも知れません。  
逆に言うなら、本当に問題を乗り越えようとするのであれば、急いで解決法を探すよりも《問題を正確かつ具体的に把握する》ことの方が重要なのです。
これを称して、昔の賢者は『問題解決のためには、正しく答えるよりも、正しく問うことの方が重要だ』と言ったのだと思います。

4.問題を正しく問うためには…

企業や組織の経営陣が、自らの事業や業績上の問題を《正しく問う》ことを支援するためには、まずは『こんな問題があるのではないか』として《①ヒント(仮説)の提供》のから始めてみるべきでしょう。そしてそのヒントに従って、経営陣に自ら《②考えさせる》ことが重要になるのです。
考えるのが苦手だと主張する経営陣には《③他社事例と自社を比較させる》方法もあり得るでしょう。比較なら興味を持ちやすいからです。もちろん、比較した後に《なぜ違うのか》を考えなければなりませんが、それは《相違点を教える》ことで代用できます。

5.コンサルティングは《問題認識活動》

いずれにせよ、この《①ヒントを提供する》《②一緒に問題を明らかにする》《③事例を検証する》というのが、実はコンサルティング内容の大部分を占めているのです。つまり実践的なコンサルティングの目的の大半は、問題の正確かつ具体的発見活動で占められているということです。
問題さえ明らかになれば、その問題を解消するためには《何を改善または習得すべきか》が明らかになるからです。

6.もう少しビジネスライクに捉えると…

もう少し、コンサルティングをビジネスライクに捉えるなら、それは『クライアントの問題を、的確に認識できるように文書や数値で表現する対価として料金を得る』活動だと言えるかも知れません。
そして、その際、クライアントの《問題解決意欲》を刺激できるなら、《問題解決への協力活動》が、コンサルティング・ビジネスに加わります。
そのため、プロコンと呼ばれる経営コンサルタントは、まず問題や課題抽出のための《診断》を有料で行い、診断内容に沿う対策への協力を提案して《解決編》に進むのです。
もちろん、経営者の判断次第で、解決編には進めない時もあります。

7.士業先生のコンサルティングの方向性

そのため、社会保険労務士事務所の先生が、コンサルティング機能を導入して、士業ビジネスを《今以上に活性化あるいは効率化》したいと考えられる場合には、表に現れる形として、この《診断機能》を活用することが重要になると考えられるのです。
たとえば『なぜ社内トラブルが深刻化してしまうのか、その実情と背景を《診断》します』という形です。もちろん、診断書の中では、その後の《改善提案》も約束すべきでしょう。《診断》の結論は《改善提案》だということです。
しかし、それは《改善提案》であり、《改善支援活動》自体を約束するものではありません。活動に進むかどうかは別契約だからです。

8.このコーナーの狙い

この《コンサルティング》のコーナーでは、以上のような考え方から、《問題発見》を有料化する方法ばかりではなく、実践コンサルティングの現場で用いる《手法》や《技術》を、ご紹介して行きます。
その《手法開示》の1つが《業務有料化》の講座なのですが、もっと身近な内容についても、ご一緒に《実践的》に捉えて行きたいと考えています。

自社の問題や実力を深く顧慮しないまま、新しいシステムや方法論に飛び付くほど危険なことはありません。しかも、そこには《失敗の危険》ばかりではなく、《他者に利用されて終わる危険》があるのです。
その意味では、《有料診断》に至らなくても、関与先等の問題を《仮説的に事例で指摘》するようなコンサルティング活動が、悩みを深める中堅中小企業経営陣のためにも、ますます重要になって来ていると言えるのかも知れません。

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