コロナ禍で、一部では《働き方改革》は忘れ去られた課題になっているかも知れません。そうでなくとも、当面の法対応で一段落している感も否めないでしょう。
ところが、今のうちに打っておくべき《手》があるのです…。

1.コロナ禍に結果として強制された《時短》

直接、操業の時短を求められた企業でなくとも、コロナ禍では、密を避けたり、取引先との交渉形態を変えたりすることで、オフィスでの滞留時間は短くなったケースが多いと思います。
また、在宅勤務が増えた企業では、一種の危機意識の下で、勤怠管理は甘くなる傾向にあっても、昨今の状況下では、従業員が在宅で長く働く可能性は小さいでしょう。

2.コロナ禍が一段落すると…

ところが、コロナ感染は容易に収まらないとしても、それがパンデミックとまでは言えない状態まで《落ち着く》と、ビジネス活動は本格化し始めます。
本格化するどころか、様々な遅れや損失を《取り戻す》ために、《災害復興期》のような働き方が必要になるケースも、否めないと思います。私たちの社会は、そうやって、様々な《経済危機》を乗り越えてきました。

3.特例措置が認められるかも知れないが…

そんな《復興型の寝食を忘れた働き方》は、働き方改革の精神には真っ向から反するものですが、国政は《特例措置》で、その際の経営者への罰則を適用しないかも知れません。
しかし、従業員の意識はどうでしょうか。いわゆる《ブラック》に戻ることを歓迎できるでしょうか。働き方改革は、平成後期の《社内トラブル》の解消策の一つとして生まれて来たとも言えるとすれば、労働の強要は社内トラブルの再燃を招くかも知れません。

4.後戻りはできないという意識が肝要

そのため企業の経営陣には、働き方改革が示す将来への道は、政策が一時的に多少変動しても、本流としては、後戻りできないと捉える覚悟が必要なのです。
ただ、覚悟を決めるのみならず、働き方改革の流れに沿って《自社事業へのプラス効果》を生み出す発想が必要になるでしょう。

5.目先の必要性と長期的視点

たとえば、《災害復興期》のような働き方が必要であるなら、まずは、働き方改革の方向で、従業員の代表者と《36協定》を結び、臨時に上限規制一杯まで《労働時間を確保》しておく必要があります。それは順法云々のみならず、社内の意識徹底にも役立つでしょう。
そして、その間に経営者が、《働き方改革の内容を研究》しながら、《自社に合う方向性》を設計して行くことが肝要になるのです。

6.Withコロナであれ、Afterコロナであれ

つまり、Withコロナであれ、Afterコロナであれ、《ビジネスを再度軌道に乗せよう》とするなら、あるいは《事業の寿命を少しでも引き延ばそう》とする時でも、《①当面の時間的余裕を作り》ながら、《②組織運営の長期的指針を示す》という両面活動が、今の経営陣には求められるということです。
そもそも、働き方改革は《長期課題》で、当面の法対応が手続き的に終わったからと言っても、問題がなくなるわけではありません。しかも、今後発生する《復興期の困難》の中で、コロナ禍で見えにくくなっていた組織課題が噴出するかも知れないのです。

7.当面にも先行きにも欠かせない《転ばぬ先の杖》

そんな中で、今、社会保険労務士事務所としても、コロナ禍の影響を前提にしながら、今後《どのような取り組み》を行うかを、明確に定めるべき時にあると言えると思います。制度自体には、未完成な部分が多く具体策が不十分だとしても、働き方改革は《社会意識の大きな変化》をビジネス組織として《乗り切る》指針を示したものに他なりません。
経営者に、その内容に《今後の経営のヒント》があると伝え、先行きのマネジメントにも当面のマネジメントにも躓かぬよう、経営者が検討を動機付けられる《転ばぬ先の杖》を提供するのは、今、社会保険労務士事務所の大きな役割になっていると思います。
《転ばぬ先の杖》の例は、たとえばここにあります。