企業経営者に『管理者の役割は?』と質問して、いったい何人が意味のある答えができるでしょうか。今、それが組織最大の問題になりつつあります。それは《どのような》問題なのでしょう。そして《どうすべき》なのでしょうか。
目次
1.管理者の役割が益々重要化して来た背景
私たちは、仕事をどう覚えるでしょうか。それはもちろん自ら《体験》して覚えるのですが、その前に《上司の働きぶり》を見て、仕事を《疑似体験》的に学ぶところから始めるケースが多いと思います。
学校の勉強のみならず、いわゆる導入研修だけでは、その内容自体がよほどのものでない限り、現場の仕事には役立たないことの方が多いからです。中途採用者でも『新しい会社での上司や同僚の仕事ぶりを見て覚える』のはむしろ必須だったと思います。
2.脱“俺の背中を見て学べ”が進まぬうちに
ところが《働き方改革》のずっと以前から、現場は良く言えば《少数精鋭化》していました。逆に、同業他社との価格競争やシステム化が進み、仕事内容は多様化あるいは分業化して行きます。自分の仕事に《真似るべきお手本がいない》状態が、どんどん進んで行ったわけです。
そんな《実践指導力の穴埋め》をすべき管理者は、さて、どうしていたでしょう。管理者の多くは、自分固有の仕事を抱えて大変だったためもあってか、部下を指導するより『俺の背中を見て学べ』という古い感覚に逃げ込み気味だったのではないでしょうか。
3.仕事を見て覚える機会を壊す働き方改革
そこに《働き方改革》が追い討ちを掛けます。『何をしたらよいか分からないので、とりあえず周囲の残業に付き合う中で、その仕事を覚えよう』という姿勢が、頭ごなしに否定されたからです。勉強残業までもがサービス残業ないしは余計な残業になりました。
もちろん《付き合い残業》は、それ自体問題ですが、残業代を貰えなくても学びたい従業員には必要悪だったかも知れません。そして、そんな最後の砦とも言えるものが崩壊する中で、一気に《管理者の現場指導力》が問われるようになったと言えるのです。
4.担当業務を持つ管理者に指導余力はない
しかし既に申し上げたように、管理者にも《自分の仕事》があるのが普通です。休日出勤も平日残業もなしに、部下を指導する時間を持てるでしょうか。しかも、就業時間内に部下の指導をするとしたら、こう言ってよければ、気楽にはできません。
しかも、いわゆる《呑みニケーション》さえ、『それが命令なら業務ではないか』と言われる始末です。ところが、そんな中で、だんだん本質的な問題が、管理者の意識の中にクローズアップされて行きます。
5.管理者が遭遇してしまう本質的な問題
その本質的な問題とは、『改めて考えると、実は部下の指導法が分っていない』という現実ではないでしょうか。懇切丁寧に指導された経験に乏しい管理者に、実践的な部下の指導は、案外難しいのです。
その結果、現場のレベルが上がらず、経営陣と現場の距離が益々拡大して行きます。そして、そのレベルや意識の違いが《相互不理解》を生み、事業推進力が鈍るだけではなく、社内トラブルを発生しやすくしてしまうのです。トラブルがない場合でも、業績は上がりにくくなっているでしょう。いわゆる《士気の低下》です。
6.上と下の間を行き来する中に答がある
では、どうすべきなのでしょうか。その方向性を一口に言うなら、《上》と《下》の両方に通じる管理者に、自分の役割を意識的に学ばせることが急務になったと言えるのです。しかも、実践的に学ばせるには、1つの視点から取り組み始めなければなりません。
その視点とは管理者に『私は上の意向を下に伝え、下の現状を上に伝える要(唯一無二のキーマン)なのだ』と意識させて、上下間を行ったり来たりすることが求められていると理解させることです。
7.頼もしい軍曹を育て上げる社内研修は?
『そんなことで学べるのか』と言われるかもしれません。たしかに《行ったり来たりの中で学ぶ内容自体》が重要になります。しかし逆に、どんな理屈や手法を教え込んでも、管理者が、上下間を行ったり来たりすることの意味や必要性を理解しないなら、その理屈や手法は《絵空事》になってしまうのです。
逆に、行ったり来たりの中で、社内での《認識共有》がどんなに重要かを理解するなら、管理者には、業績獲得に邁進する《頼もしい軍曹》になる道が開けるでしょう。今、そんな方向性を持つ管理者研修が、多くの企業で不可欠になっているのです。
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