沖縄弁に『まくとぅそーけー、なんくるないさあ』という定型句があるようです。この定型句は、沖縄を舞台にしたドラマやアニメで有名になりましたが、同じことが中堅中小企業の《経営》にも言えそうなのです。そして、それはそのまま社会保険労務士事務所の経営支援に繋がる糸口になり得るのです。

1.まくとぅそーけー、なんくるないさあ!

たとえば《白い砂のアクアトープ》という、沖縄の水族館を舞台にしたアニメでは、逆境に立たされた2人の少女が、毎朝玄関先の石の像に『まくとぅそーけー、なんくるないさあ』という祈り(おまじない?)を捧げて出勤する姿が描かれています。
その言葉の意味は、微妙に異なる解釈もあるようですが、『まくとぅ(誠)のそーけー(心があれば)、なんくるないさあ(なるべきものがなる)』というもののようです。
ただ、これの《どこ》が、中堅中小企業の経営にフィットするのでしょうか。

2.中堅中小企業のビジネスの《根幹》は?

将来に自社株公開等を考えているスタートアップ企業は別として、中堅中小企業は《特定の狭い分野=ニッチ》で《有効な商品や業務》を提供することで成り立たっています。商品の製造や仕入れ等も《人が担う業務》に依存すると捉えるなら、中堅中小企業は《業務提供で成り立る》ビジネスだとも言えるのです。
もちろん大企業にも《業務》がありますが、それは戦略や戦術を仕組みで実現するための手段であり、《業務そのものがビジネスの根幹》ではないでしょう。

3.提供業務が正常なら、なんくるないさあ

しかも中堅中小企業の市場は、決して大きくはないため、行き詰まった時でも《組織内の人》が新たな顧客や取引先を探す《気》を失わずに《業務に精を出す》なら、一定規模で事業を維持できるはずなのです。
そのため、中堅中小企業でも《業務が誠(正常)なら、なるべきものがなる(自社のパワー発揮で困難を克服できる》と言えるわけです。
逆に、組織の士気が下がって《正常な業務》を遂行できなくなれば、どんなに良い商品やサービス、あるいは戦略や構想を持っていても、中堅中小企業の《未来》はなくなってしまうのです。

4.中堅中小企業の事業と経営の特質が出現

もちろん、今後は《社会全体の人材の絶対数》が減少するため、中堅中小企業でも《仕組み化》や《システム》の導入は避けられないでしょう。しかし、その仕組化や機械化は《どんどん市場を開拓する(量的発想)ため》ではなく、《自社の強みを生かし続ける(質の維持)ため》に行われるべきものだと言えます。
継続を旨とする中堅中小ビジネスでは、《事業拡大》はしばしば《質》を下げて、事業を危機に陥れてしまいます。そこに中堅中小企業の事業特質のようなものが感じ取れるはずなのです。

5.経営は人事・労務を尽くして天命を待つ

しかも、『まくとぅそーけー、なんくるないさあ』を《人事を尽くして天命を待つ》と解釈するなら、それこそ《人事労務に徹して企業力を蓄えれば、後は天命が適切なところに自社を運んでくれる》と捉えられそうなのです。もちろん《尽くすべき人事》と《人事労務》では意味が違いますが、中堅中小企業は今後益々《人事労務に全力を尽くすという意識で経営されるべき組織》であるべきなのだと申し上げたいのです。
その意味で経営者は、自社の事業が《組織の士気》や《業務の質》にかかっていることを、改めて、もっともっと意識すべきでしょう。

6.人事労務課題は今後益々《業績》に直結

そんな風に企業経営を捉えると、人事労務課題への取り組みが《そのまま業績に直結している》のが当たり前に感じて来ます。確実な手続き実行や法律対応や採用競争等の意識もさることながら、《従業員が技量一杯に働ける組織を作る》ことが、業績を左右する大きなキーになるということです。
『しかし、優秀な人材が集まらないのがネックだ』と言われるかも知れません。しかしそれは、必ずしも中堅中小企業の《今後の生き残り条件》ではないかも知れないのです。

7.問題はレベルよりも完結性の高さにある

なぜなら中堅中小企業ビジネスは、先にも申しました通り、他者が取り組まない《ニッチ市場》での《完結性の高い》業務の提供だからです。
《完結性が高い》とは、レベルが高いことではなく、その分野では《任せられる》ことを意味します。たとえば《飲料水配り》のような、一見、誰にでもできそうなビジネスでも、それで必要な時に水が飲めるなら、顧客がお金を払うビジネスとして成立し得るということです。
つまり、自社の人材のレベルが高いか低いかではなく、高いにせよ低いにせよ、その人材が持てる力の最大を引き出す形で事業分野を選択し商品やサービスを提供することが、中堅中小ビジネスの継続と発展にとって重要な課題になるということです。

8.社労士先生方の経営支援コンセプト形成

更に、社会保険労務士事務所が提供する《手続き》や《支援》や《警告》や《助言》が、個々バラバラのものなのではなく、『自社の人材から最大限の力を引き出すために必要となる要素なのだ』と経営者が気付く時、社会保険労務士事務所は《重要な経営支援者》になっているはずなのです。
個々バラバラなら、単なる手続きにも見える《届け出業務》も、それなしには《組織の円滑な運営に支障が出る》と知るなら、業績獲得のための重要なステップの1つになるということです。
もちろん気付きを待つのみならず、語り掛け(提案)が重要になることは、申し上げるまでもありません。

補足.経営支援を無料で行ってはいけない!

ただ、企業にメリットをもたらす経営の支援者になるのですから、先生方も《メリット》を獲得する、つまり《経営支援業務を有料化》することが必要だと思います。無料奉仕は、それ自体が悪いとは言えないでしょうが、それでは長期的な継続が難しくなるため、一時しのぎに陥りやすいという意味で弊害が伴うと申し上げたいと思います。
そして何より、業務の有料化のためには《提案書》が不可欠だと、ご指摘申し上げます。

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