『新規設立企業へのアプローチには、“助成金”程度しか思いつかない』と言われることがあります。また『助成金提案は、実際に獲得できてもできなくても一過性に終わりがちだから、企業との関係形成に役立たない』という指摘もあります。
しかし、そもそも新規設立企業アプローチの《ネタ》は、本当に“助成金”しかないのかと問うべき時期に、今来ているようなのです。なぜなら、“働き方に対する意識”が変わる中で、“マネジメント・センス”なしに、開業から継続へ、事業を軌道に乗せることが益々難しくなって来ているからです。

1.異例の好調さで開業期を乗り切ったA社

開業初年度に、ギリギリではありますが、損益黒字を計上したA社がありました。A社は、あるメーカー経営者の配慮で、その販売店として設立したため、当初から大きな支援を受けることができたからです。
その支援は、商品提供や資金援助から、ホームページ作成や売り先紹介等、非常に多様でした。開業時の従業員は6名で、直ぐに人手不足に陥ります。新規人材募集には、今のような人手不足の時期ではありませんでしかたら、多数の応募がありました。
ところが新規採用に関して、給与が決められません。開業メンバーとの比較上、軽々には給与を決められないからです。それどころか、開業メンバーも、他者の給与額を知りませんでした。メンバーは、『みんな同じだと思っていた』のです。

2.社内が一転《しらけムード》に陥った《きっかけ》は…

採用活動をきっかけに、社内のムードは一変します。しかも、メンバーの何人かには『事業が軌道に乗ったら、改めて(給与額を)考える』と口約束していたため、初年度の黒字で、社長は対応を迫られることになったのです。
初年度から事業が順調で“お祭り騒ぎ”になるはずだったA社は、社長だけが報酬が大きいことなどもあり、一気に“しらけムード”に陥ります。そして、すぐに6人中2人が辞めていきました。新規採用どころか、設立メンバーも維持できなかったのです。
しかも、就業規則も作成していなかったため、2人の退職時には、もめ事を回避できませんでした。A社は、設立後1年強の企業なのに、未払い残業代見合いの金額を、解雇手当として、2人に支払ったのです。

3.事業が軌道に乗る時に発生しやすい組織内の不協和音

A社は特殊な事例で、これを一般化することはできませんが、新規設立企業では、就業規則や賃金体系はもちろんとして、個々の《労働条件》も定めないまま、走り出すケースが少ないとは言えないでしょう。
そして、経営者が《人事労務手続き》や《給与体系》、あるいは就業規則や残業等に関わる取り決めの重要性に気付くのは、事業が軌道に乗る頃であることが多いのです。やっと“社内”を考える余裕ができるからでしょう。あるいは『利益を出さなければ、どうにもならない』という危機感で、社内メンバーを引っ張って行けなくなるからだとも言えるかも知れません。
しかし、“その時”に対応するのでは、遅すぎることの方が多いでしょう。《はじめ》にすべきことをしていれば、簡単に済むことが、数年放置するだけで、非常に深刻化してしまうのは《人に関わる問題》の特徴でしょう。

4.新規設立企業をイメージする中で鮮明化する社労士事務所の存在感

ここに、社会保険労務士事務所の社会的役割の一つがあるとは言えないでしょうか。もちろん、NPO法人のような奉仕が求められるわけではありません。開業期に必要な人事労務に関わるサポート業務を、“適正価格で提案する”余地がないかと申し上げているわけです。
もちろん、その提案が《通る》ためには、経営者の意識を高める《手紙:DM》が必要でしょうが、すぐに契約に至らない場合も、開業時に送った《手紙:DM》は、将来のビジネスのタネになり得るはずなのです。

5.新規設立企業は将来の《提案見込み先》にもなる!

開業後に一定期間が過ぎた後、先のA社のケースのように、経営者が窮地に陥るような時、開業期に《経営者に人事労務の重要性を説くDM》を送っておくと、社会保険労務士事務所の《提案》がしやすくなります。
もちろん、開業後間もない企業への提案自体は、まだ“支払い能力”が乏しいでしょうから、一気に範囲を広げるのではなく、重要課題から順番に片付ける《マネジメント・プラン》が必要になるでしょう。まずは、給与規則を決めて給与計算代行から入ることになるかも知れませんし、必要な人事労務手続きを、順次整理し直すところから始まるかも知れません。
そしてその時、提供業務が曖昧な《顧問契約》というざっくりとした契約をせずに、その都度、提供業務範囲を明確にした上で、料金を決め、逐次提案して行けば、かなりの期間、有料提案を続けられる可能性があります。
顧問契約等は、一連の《基礎的活動》の後で考えても良いかも知れません。

6.《経営者の意識付け》と《無理のない範囲のサポート》設計

つまり、まず“①経営者に人事労務業務の重要性を認識させ”て、“②必要最低限の支援内容を定め”て、それに企業も士業も“③無理のない範囲で計画的に取り組む”ことを考えるなら、新規設立企業に対するアプローチ感覚も、大きく変わって来るかも知れないということです。
しかも、開業期のアプローチが功を奏さなくとも、初期に経営意識を持たせるDM内容でアプローチしておけば、実際に経営者が“④問題に直面する頃(開業3年後程度)を見計らって再アプローチを掛ける”ことも容易になります。『開業期にこんなご案内を差し上げた〇〇ですが、その後いかがですか?』という“大義のあるアプローチ”が可能になるからです。
逆に、開業期に《助成金》でしかアプローチしていなければ、確かに、短期的にも長期的にも、企業との関係形成は難しいかも知れません。

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