社会保険労務士事務所と企業との《継続的な契約関係》形成の2大柱は、申し上げるまでもなく、労務顧問契約と給与計算代行契約でしょう。
しかし、そこには《継続性/事務所の安定収入》以上の意味があります。その意味は、一口で表現するなら、その2つの契約が人事労務課題の《入口(=労務顧問契約)》と《出口(=給与計算代行)》を形成するからです。そこで、その効用とチャンスの芽を、ご一緒に見て行きましょう。

1.人事労務課題を経営者と共有する《入口》と《出口》

どんなに重要な《人事労務課題》でも、経営者が、その内容や重要性に気付かなければ何も始まりません。あるいは、始めることはできません。
たとえば、『管理者への登用基準があいまいなために、管理者の人選にも、その後の意識高揚にも問題が出ている』という経営者の問題意識があって、はじめて《昇格制度》が問題になるという関係があるからです。

2.顧問先経営者の愚痴からでも発展可能な支援あり

労務顧問契約後に、たとえ社会保険労務士事務所から積極的な提案を行わない場合でも、経営者が《管理者の素養に愚痴をこぼす》ようなケースに遭遇すれば、管理者教育や管理者の登用制度を《逆提案》できるはずです。
先生方が積極的に、顧問先の《問題》を発見して、その《改善法》を提言する時は、なおさらでしょう。

3.なぜ給与計算代行は人事労務課題の出口なのか?

では、なぜ給与計算代行が、人事労務課題の《出口》なのでしょうか。
それは、申し上げるまでもなく《給与の支払い》が、あらゆる人事労務課題を経た結果として行われるからに他なりません。
もちろん、深く考えずに《給与》を決めてしまう企業も少なくないでしょう。たとえば、中途採用時に前職の水準に見合う額を、自社の給与として提示することを積み重ねてしまうと、給与は人事労務課題の《出口》ではなく、中途採用の《蓄積結果》になってしまいます。

4.給与計算代行を起点に重要な人事労務課題に進む

そんな時、給与代行を担当される先生方は、その《問題》に容易に気付かれるはずです。そして、その問題を解決する具体的な方法が見つかれば、それがそのまま《重要な人事制度提案》の1つになって行くわけです。
その時、人事労務課題の《出口》を起点にして、どんどんと《入口》にまで迫る《逆行的な逆れ》を辿る道筋に光が差し始めます。

5.適切な《意識付け》が入口と出口の中間に進む素

『否、そんなに簡単には話が進まない!』としたら、もしかしたら、労務顧問契約や給与代行計算契約に際して、経営者を《意識付ける》機会が不足していたのかも知れません。
もちろん、契約時の意識付けに成功したら、確実にその後の有料契約に進めるというものでもないでしょう。しかし、契約時でも契約後でも、意識付けを怠らない姿勢を持つと、《意識の高い経営者》に一定の確率で出会えるものだとも言えるのです。

6.企業の経営陣の契約に際する意識が高くないと…

逆に、労務問題対応の《保険》的な労務顧問契約や、単なる《業務》代行としての給与計算代行なら、そもそも経営者と《深い話》をすることさえ難しくなってしまうかも知れません。
ここでいう《深い話》とは、経営者が組織上の問題を自ら開示するような話です。たとえば、従業員が就業規則や働き方改革、あるいはハラスメント問題を盾にして『こんな不当な姿勢をとっている』とか、『給与の不公平感をなくす方法が分からない』という《経営問題》を、何か事件が発生する前に、経営者が《自己開示》する種類の話です。

7.トラブルが発生してからでは《遅い》場合が多い

経営者の《自己開示》がなくても、社内トラブルが発生すれば、先生方はその解決の支援に向かわなければなりません。しかしそれがどんなに重要な支援でも、《特定の問題の解決》に留まるものであり、制度や仕組み、規則やその運営法の《提案》に、常に繋がるとは言えない場合の方が多いと思います。
そのため何でもない時に、経営者と《深い話》ができる関係が、その後の提案活動のために、是が非でも必要なのです。

8.組織の士気を高めながら振り回される危険を回避

だからこそ、《今日的な人事労務課題》あるいは《組織マネジメントの方向性》を示唆しながら、人事労務顧問契約や給与計算代行契約を《提案》し《締結》することが重要になるのです。
それは、組織の士気を高めて業績獲得力を向上させるためばかりではなく、先生方や関与先の企業経営者が、トラブルに振り回されることを避けるためでもあります。
『いやあ、もう契約を済ませている』という場合でも、経営者の意識付けに《遅過ぎる》ことはないはずです。企業や組織が消滅しない限り、経営力で難局を乗り切ることが可能だからです。

事務局からのお知らせ

さて、では《労務顧問契約》や《給与計算代行契約》に際して、経営者に、どのような動機付けをすべきなのでしょうか。
その一例となる《提案書と解説書が付いた講座》をご用意しました。この講座は、これから提案されるケースにも、契約後の経営陣の動機付けにも、お役立ていただけると思います。
《労務顧問》と《給与計算代行》の提案書キット