対面対話と文書伝達とセミナーのアプローチ上の違いと活用法

何が《得意》な手段かを見極めよう
ハラスメント問題に限らず、頻繁な法改正や雇用ルールの変更や労働時間管理の徹底から従業員の心の病への対応等、従来感覚に留まる経営者には《容易には理解も納得もできない》人事労務課題が増えていると言えます。
ただ、そうした状況下だからこそ、《社会保険労務士事務所からの働き掛け》や《事務所サービスに係る誤解の解消》が益々重要化していると捉えるなら、《自事務所にとって得意な経営者アプローチ法》を見極めるべき時が来たと言えるのかも知れません。

(執筆:森 克宣 株式会社エフ・ビー・サイブ研究所)

1.経営者に理解させて納得を誘うべき時

『先生に教えられた人事考課がうまく機能しない』とか、『従業員とトラブルになったから仲介してくれ』等という、社会保険労務士事務所サービスに対し、《ある種の誤解》に基づくクレームが、今増えているかも知れません。『助成金が不支給になった(のは先生の責任だ)』という憤懣をぶつけられることもあり得るでしょう。

そうした状況下で、人材の定着や社内の不満解消のための《仕組み》や《ルール》作りに関して、経営陣に理解させて納得を誘うべき機会が、今増えつつあるとも言えます。

2.《3種類》の経営者へのアプローチ法

理解や納得を誘う時には、まず総務担当者や経営者に対する《アプローチ》が必要になりますが、そのアプローチ法には、大きく分けて《3通り》あると言えるのです。その3通りとは《①対面接触》《②文書告知》《③セミナー実施》に代表されるものです。

もちろん、たとえば《文書なしに対面だけ》というアプローチは難しいでしょうから、この3通りは《何をメインの方法にするか》という程度の分類になるかも知れません。

そして、まずは所長先生や個々の職員先生について、《どんなアプローチ法が得意で何が苦手か》を改めて考えてみることは、決して無駄ではないはずなのです。

3.相手も同じような得意と不得意を持つ

その一方で、得意や不得意は、経営陣サイドにもあります。たとえば《対面》で説明している時、経営者から『この間、聞いたセミナーではねえ…』等と、セミナー内容ばかりが持ち込まれるケースがあり得ます。この経営者は《対談》と《雑談》の区別が十分につかず、意味のある話はセミナーでしか聞けないと感じているのでしょう。

あるいは郵送やメール等を通じて《文書》で告知すると、『説明に来て欲しい』と言われることがあるかも知れません。《文書を読んで理解する》のは、誰にとっても当たり前だとは言えないのです。そのため《聞き手の得意や不得意》も考慮しなければなりません。

4.アプローチ上でのジャブと決め技

もしそうなら『関与先の得意な方法に合わせて、3通りの方法全てが必要になるのではないか』と思えて来ます。しかし、誤解解消にせよ新たな提案にせよ、『アプローチには、ボクシングで言うところのジャブとストレートやフックがある』と捉えることが重要になりますし、その方が余計な荷物を背負い込まずに済むようになるとも言えるのです。

ジャブは牽制的なパンチですし、ストレートやフックは方法が異なるダメージ狙いのパンチです。ただ、ジャブを打たないボクサーはいません。それはストレートかフックのどちらか得意な方(あるいは相手が苦手な方)で相手を《仕留める》方法を探すための牽制だからです。

5.ボクシングと指導や支援は大きく違う

経営者とのコミュニケーションでは、ボクシングとは異なり、《①対面》《②文書》《③セミナー》のどれをジャブに使っても、あるいはどれを《仕留め技》に使っても、機能し得ます。

たとえば《②文書》で軽くニーズ喚起を行い、《①対面》や《③セミナー》に持ち込むとか、《①対面》の中で、詳しくは《②文書》を送る機会を作り出し、それを提案クロージング文書にしてしまうとか、《③セミナー》から《①対面》説明や《②文書》送付の機会を作るような方法があるということです。

その際の《仕留め技》は、自分の得意分野であることが好ましいはずです。

6.得意と不得意な方法の簡便な見極め方

ただ、その得意と不得意を《どう見極めるか》という課題と、苦手分野あるいは苦手意識を《解消・軽減する方法があるのか》という課題が残ります。

得意と不得意の見極めの基本は、相手の反応を観察しながら話すことや相手の反論等に苦痛を感じないなら《①対面が得意》だと言えるはずです。その一方で、相手の反応に影響されずに言いたいことを語り切る方法を好むなら《②文書派》だと言えます。

更に、指導者や支援者としての立場イメージのようなものを相手に示した上での対話に魅力を感じるなら、《③セミナー形式》が有効手段になるでしょう。

7.決めパンチは《①対面》で行うもの?

ただ、ビジネス上の提案や誤解解消では、多くの場合、《②文書》や《③セミナー》がジャブの役割を果たし、契約や納得の獲得という《決めパンチ》は《①対面》でしかできないケースが圧倒的に多いと言えるでしょう。

そして、そう捉えた時に、ジャブとしての《③セミナー》や《②文書》の完成度が、どんなに《①対面》を効果的にし楽にするか、あるいは逆に《①対面》を必要以上の緊迫状況に陥れるかが体験できる、あるいは既に体験されているはずなのです。

8.《①対面》の負担を大きく軽減する脇役

『それなら得意と不得意を分ける必要はない』と言いたくなりますが、《①対面》が得意なら、対面機会での《②文書》の補完力は少しで済みますし、《①対面》が苦手なら、《②文書》の補完力を高めて、対面の負担を質的にも量的にも極力軽減することが重要になるという現実は否定できません。

その一方で、話を聞いただけでは簡単に理解したり納得したりはできない相手には、《②文書》を先に渡して、《①対面》は質疑応答的に進めるという工夫が必要になるケースが、想像以上に多いはずなのです。

9.《③セミナー》が持つ独特の役割とは

一方で《③セミナー》は、多数を集める通常形式でも、一対一で進める対面型の指導でも、忙しいことを言い訳に、なかなか人事労務課題に目を向けない経営者に、《考える》あるいは《現実を知ろうとする》ための《時間を作る覚悟を持たせる》効果があるものです。

たとえば、セミナーや勉強会を実際に開催しなくても、セミナーのストーリーやツールを持てば、『通常は1時間でセミナーを実施していますが、個別でなら、30分で要点だけをご説明できます』という風に、時間に追われる相手への配慮を示せるのです。

本当のところ《時間がない》のは、単に心理的な問題であることの方が多いため、《時間不足という焦りの気分》を軽減するために、《③セミナー》を持つことにも積極的になるべきケースがあるということです。

10.相手を評価せずに得意と不得意を見る

いずれにしましても、最も問題なのは、相手の得意不得意を考慮せず、《どんな相手にも同じアプローチ》をして、その反応の結果、『この経営者は意識が低い』とか『この経営者は見込みがある』等と決めてしまうことではないかと思います。

どんな経営者も、自分にとって得意な方法での学びなら、理解がスムーズになり得るはずなのです。そして、相手の得意不得意を見極めるためにも、まずは《自分自身の得意不得意を真剣に考える》ことが、案外役に立つと言えるのです。自分を知れば、自分と似ている人の実情が分かりますし、自分に似ていない人へのアプローチ法も、探しやすくなるからです。

ただ、事件が起きてからしか学べない経営者もいることは、残念ながら、覚悟しておくべき重要事項の1つでしょう。事後対応も指導の重要要素の1つだと思います。

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