パワハラとセクハラ、管理者の育成、給与や賃金の制度見直し、人事考課、新規採用促進あるいは、トップダウン経営からルール経営への転身の不可避性等、今日の《組織経営=人事労務》課題は、大問題ばかりが積み上げられる傾向があります。これに更に、高齢者や女性あるいは若手人材の活用課題が加わり、今後の《組織経営》は、どうなって行くのでしょうか。

1.たとえば同一労働同一賃金制度で…

たとえば、同一労働同一賃金対応では、初期の仕組みが《ある程度》出来上がっても、その実践の中で、様々な《現実問題》が発生することが予想されます。正社員であれパート社員であれ《同じ仕事》をしていれば《報酬は同じだ》とするのは形式上の問題に過ぎないからです。
形式上の《決め事》がどうであれ、《労働=業務》は、直接であれ間接であれ、事業の《成果》や《利益》につながってこそ、給与や賃金は正当なものになるはずなのです。その《つながり》を、誰が、どのように評価するのでしょうか。

2.小さな組織なら大丈夫とも言えない

『いやあ、うちの組織は小さいから(人事労務課題は問題にならない)…』という経営者は、今も少なくありませんが、小さい組織程、それぞれの《業務範囲》は錯綜しているはずです。『総務担当だから顧客対応はしなくてよい』とは言えないからです。
それ以前に、小さい組織では《職務分掌》を定めることさえ難しいでしょう。『だからと言って、給料がどうのこうのというトラブルにはならないだろう』と、経営者は高をくくっていて良いのでしょうか。

3.中堅以上の企業では更に問題は深刻

誰もが特別に《意識》せずに、《会社に必要な仕事》をこなしている時には問題にならないことでも、たとえば『同じ業務をしていれば賃金は同じだ』という意識が広がり始めると、《賃金問題》が表に出ない場合でも、結構深刻な別の問題が起こり得ます。
なぜなら、国が定める《方向性》の中で『私は私の仕事をしていればいいんだ』という思いが強くなるからです。それは『余計な仕事はしなくてよい』という感覚を生み、社内業務に様々な《穴》を作り始めるかも知れません。組織の大小にかかわらず、私たちは大きな問題を抱え始めているのかも知れないのです。

4.人事労務課題の基本部分に立ち返る

その時、経営者が『貢献してくれる従業員にどう報い、貢献度の低い人をどう動機付け、組織活動の阻害者にどう対処するかを考えなければならないな』と感じ始めると、そこには多様な人事労務課題が広がっていることに気付くはずです。
ところが、今度は課題が多過ぎて、『何から手を付ければよいか』が分からなくなります。そして、いつの間にか《重要課題》の前で立ち往生してしまうのです。

5.経営方針や戦略が役立たなくなった

大企業で人事労務部門と経営管理部門との力関係が《逆転》したのは、1980年前後だったと思います。ニクソンショック(円高ショック)とオイルショックが重なり、それまでの《良き人材を集めれば事業は成り立つ》という状況が薄くなったからです。
どんなに良き人材を集めても、経営の方針や戦略が整っていないと組織は烏合の衆に陥るという懸念が、経理と財務の素養を持つ人材で構成される経営管理部門に《組織エリート》の地位を奪われた?わけです。

6.人材の育成に注力しなかった報い?

その結果、長きにわたって《人材育成》よりも《事業戦力》を優先するマネジメント理論が、こう言ってよければ横行しました。中堅中小企業までもが、人材の《育成》や《教育》に関心を示さなくなったのです。
そしていつの間にか、《人が成果を創り出す》という原則が忘れられ、《経営上の工夫で事業成果は生み出せる》という発想が、私たちの無意識の中に根を下ろしたと言えるかも知れません。
ところが、今再び『人を育てなければ、戦略ばかりか、経営者の指揮自体が絵にかいた餅になる』という意識が、その《根》の周りに《不安》として絡まり始めた様子が見えるです。

7.不安が強過ぎると行動力は低下する

そんな中、ある経営者は《悲嘆》に暮れ、別の経営者は誰かが出してくれる正解探しに《奔走》し、更に他の経営者は、目前の問題克服に精を出すしかないとして《現実から目をそらし》ているかも知れません。
しかし今大事なことは、冒頭で申し上げた人事労務課題の中で、1つでもイメージが湧くものから、実際的な取り組みを始めるべきなのです。どれか1つからでも構わないでしょう。なぜなら、どの人事労務課題も《背後に潜む問題の本姿》は同じだからです。

8.たった1つの課題への取り組みが…

逆に、社会保険労務士事務所サイドから捉えるなら、多くのテーマの中で《自事務所の得意分野》から活動を始めれば良いとも言えるのです。なぜなら、テーマが何であれ、それを学んで実践する経営者は《同じゴール》に至る可能性が高いからです。
そして、一旦その《ゴール》を意識した経営者は、他のテーマ分野でも《自社に合った方法》に《必要な範囲で取り組む》意識を持ちやすいからです。経営者の意識が変われば、人事労務課題、つまり人材を《自らの進化を通じて業績貢献に向かわせる》ためには、『貢献してくれる従業員にどう報い、貢献度の低い人をどう動機付け、組織活動の阻害者にどう対処するかを考える』ことこそ、現代経営の最大課題だと気付けるはずだからです。

9.どの課題も《話の心臓部》は同根?

ただしそのためには、多様な人事労務テーマを、経営者の心の底に眠る意識にまで届くように、《掘り下げた》ものにしなければなりません。手法の解説や必要性のアピールだけでは、《悲嘆》型経営者にも《奔走型》経営者にも、更には《現実逃避》型経営者にも、その重要性が伝わらないからです。
それは先生方が、それぞれの人事労務課題の《肝》あるいは《心臓部》を意識して、提案やセミナーに取り組むことを意味します。今《技術論》よりも《なぜそうしなければならないのかという動機付け》の方が大事なのです。
そんな、主要テーマの《肝》あるいは《心臓部》の要素について、今後、このサイトでも順次ご紹介して行きたいと考えています。

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