1.提案は説得ではない?

《提案の基本》は、決して《説得》ではありませんし、説得によって成功するものでもないと思います。なぜなら、他者に説得された人は、往々にして満足ではなく、むしろ不満を残す傾向さえあり、その後に良好な関係が形成できないことも少なくないからです。
提案は、目先の成果とともに、長い関係を作り出す基盤になる必要があるのです。
しかも、説得されたという印象の中で過ごす顧客は、《導入した後》に、ついついサービスのあら探しをしてしまい、それがクレームの素になってしまうかも知れません。
それに対しクレーム撃退法等を考え始めるとしたら、もはや本末転倒で、大事なのは《提案の基本に戻る》ことのように思えて来るのです。

2.提案前に《打診ステップ》がない!

たとえば、自宅のリフォームを希望するような時、まず営業担当者がやって来ます。何をするでもなく、ご挨拶なのか様子うかがいなのか、ひたすら話を聞きます。『顧客が何をして欲しいのか』を聞き出したいのかも知れません。
しかし、顧客は『何がしたいか考えがまとまらないから、あなたを呼んだのだ。使えないな、この人』とすでに、心の中で不満状態に陥っていることの方が多いでしょう。つまり、提案の最初の一歩は、本来、営業サイドの《打診》から始まるべきなのです。
ところが、そんな意識が薄い営業マンは、打診しないまま、『分かりました。次回ご提案をまとめて来ます』として、その場から立ち去るかも知れません。
一方、『お願いします』と言いながらも、顧客は一気に“対決モード”に入ります。今日、適当に話した内容程度で提案されても困るからです。そうでなくとも『ほう、お手並み拝見と行こうじゃないか』という気分に陥りやすいでしょう。

3.素人が助かる《プロ見識から出る》打診

逆に、優れた営業者は色々な打診材料を持って来ます。『こんなケースがありまして…』と事例等を紹介してくれるのです。それでもイメージがまとまらなければ、『じゃあ今度、ショールームにご案内しましょうか』などと持ちかけて来ます。《打診》の内容にもステップアップがあるのです。
素人には、この《プロの打診》が、とても助かるはずです。何をどう考えればよいか、道筋が見えて来るからです。しかも『ショールームに展示されているもので、お気に入ればいいですね。展示にない特注ケースだと、費用は倍になったりもしますから…』などと言われると、自分の“意思決定の重さ”を、客は再確認せざるを得なくなります。腹をくくってショールームに行くことになるということです。

4.そして《その時》に提案が始まる!

そして、顧客は半信半疑ながら、ショールームで一番気に入ったものを選びます。そしてその時《提案》が始まるのです。契約に至る《詰めの部分》が動き出すということです。それは、たとえば『このキッチンには、こんな機能があり、あんな機能はありませんが、それでよろしいですか』と、専門的な話に代表されるものでしょう。
顧客は驚いて、いや『この機能は欲しいなあ』などと言い始めるかも知れません。そして、それは『ああ、そうですか、それならこっちがいいでしょう。でもデザインの近いのは、これですかねえ』という絞り込む話につながって行きます。まさに、この《絞り込みが提案の本姿》そのものなのです。
なぜ、この段階で提案が始まると捉えるのでしょうか。それは《この段階に至るまでは、顧客は商品やサービスを理解する準備ができない》からです。客の理解の準備ができてもいない段階で説得しても、気の弱い顧客が応じるだけでしょう。そして、気の弱い客は、既に申しました通り、その後ネガティブな感情に陥るかも知れないのです。
なお、士業ビジネスにおけるショールームは《組織経営事例》に他なりません。

5.強引な方法が成功例として宣伝される?

もちろん、気の弱い人は少なくありませんから、打診抜きの説得型営業が効果を発揮することはあるでしょう。そして、それが《成功例》として、華々しく宣伝されたり講習会等の場で共有されたりすることがあるのだと思います。しかも、それは《効率的な営業》に見えてしまうかも知れません。
そのために、『顧客は自分が何を望んでいるかを知るのに時間がかかる。それは買いたい商品やサービスに対する見識が薄いからだ』という現実が忘れ去られてしまうのかも知れません。
今、そんな《重要なポイントを外した営業論》が、意外に少なくないのです。

6.先生方は《違う》はず…!

そして《だからこそ》、顧客が簡単には理解できないサービスを提供しておられる先生方は、『自分は違う』と思われるはずだと申し上げたく思います。その時、先生方は『自分は営業には向いていない』と感じてしまわれるかも知れません。
しかし、提案せずに売り込むタイプの営業に向いていないだけでしょう。つまり《打診》を忘れて《説得》に夢中になってしまう営業の方が、実は《提案型営業の本筋》を外れていると捉えるべきなのです。
顧客は、自分が欲しいと感じたものを買って初めて満足します。しかし、自分が本当は何を欲しがっているか、自分が欲しいものは世の中に存在しているか、もし存在していないなら、どの代替品で妥協すべきかを《検証する》術を持たないのが普通です。その結果、
欲しいものを買ったという実感が、頭と腹から湧いて来なければ満足できないのです。
特に専門性が高い商品やサービスでは、その傾向が一層強くなるはずです。

7.長く成果を続ける《3つの基本ステップ》

こうした状況を受け、単なる量販ではなく、質の高いマーケティングの必要性を感じられる高度専門業の皆様には、《①顧客とのコミュニケーションの土台を作るための情報発信》《②その土台の上での事例提供による打診》《③顧客が自分の欲しいものを自ら選択するタイプの提案》を、1つのモデルとしてご提示してまいりました。
この《①対話土台》《②事例打診》《③選択的提案》には、営業研修で人気の成功談になるような華々しさはないかも知れませんが、そんな成功談が有する《はかなさ》もないため、長期的にコツコツと積み上げて行ける原則的な道筋だと言えるはずなのです。

8.このコーナーの目的!

提案は説得ではなく、顧客が自ら納得するために、まず《打診》した後、顧客が《自分の望みを具体的に実現しているかどうか、その決定に矛盾はないかどうか》の最終《調整》だと捉えれば、まさに《提案》が、それ自体《コンサルティング》的活動なのだということを、ご認識頂けると思います。
そして、提案という最初のコンサルティング活動で《信頼関係》が形成できれば、《その後》の支援関係も大きく違って来るのです。
今後もこのコーナーを通じて、《実践》に近いところで、提案の《具体的方法》やそのための《ツール》等を、ご紹介してまいりたいと考えていますが。

上記①の顧客とのコミュニケーションの土台を作る情報発信について

特に上記の3つのステップの第1番目【顧客とのコミュニケーションの土台を作る情報発信】に関しては、会員制度方式で発信情報自体をデータでご提供しています。
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