厳しい状況に耐えるにも、その後の“立ち上がり”を力強いものにするにも、組織力は経営上非常に重要な要素となります。しかもその力は《お金で買えるモノ》でもありませんので、各企業が《努力》して作り上げなければならないのです。
では、その組織力の源泉は“どこ”にあるのでしょうか。Withコロナでも、Afterコロナでも厳しい状況に置かれがちな中堅中小企業が、改めて《組織力の源泉》を再考すべき時に来ていると言えそうです。

1.組織に強力な《実行力》を発揮させる源泉とは?

組織の実行力は、単純に捉えるなら、経営トップの決断や判断に現場が適切に従うことで発揮されます。そして、組織内で発生する問題の把握や更に伸ばすべき機能の発見等については、現場から経営トップに伝わる“情報”が重要なキーとなるのです。
特に、“変化”や“特別な対応”が求められる時には、当然、“意識や情報の交換”も活発にならざるを得ないでしょう。しかし、ここに“一つの大きな問題”があると捉えなければならないのです。

2.経営トップと実践現場は直接的には繋がれない!

その問題は、経営陣と組織現場との間には、普通、現場管理者という中継基地が存在するところにあります。経営トップの決断や判断は、中継基地である“管理者”を通して現場に伝えられます。現場の問題や情報が経営トップに伝わる時も同様です。
そのため、もし管理者が適切な情報中継を怠ると、この実行力の源となる“社内コミュニケーション”は、一気に危険状態に陥るわけです。
これは、本当に“当たり前”のことですが、この“当たり前”が、しばしば忘れられるのも、もしかしたら普通なのかも知れません。

3.なぜ《当たり前のこと》が容易に忘れられるか?

なぜ忘れられるのでしょうか。それは“忘れられる”と言うより、確認のしようが“ない”、あるいは“少ない”からだと思います。組織の現場は管理者の指示を受けて、『経営陣にも方針や命令の真意を確認してみよう』とは通常思いませんし、経営陣が現場の実情を知ろうとして、現場と直接的な交流を持ったとしても、現場は“自分の評価者”である管理者に忖度してしまうのが普通でしょう。
その結果、管理者の理解力や意識のレベルが、そのまま組織のレベルになってしまうことの方が、むしろ多くなるのです。それにも拘らず、経営陣には《現時点で組織が成果を出しているかどうか》だけで、管理者の能力を評価してしまう傾向が強くなって行きます。

4.逆風に弱い(実行力に乏しい)組織が出来上がる

そして、いつの間にか『管理者に求める意識や役割、能力や言動について、特別の希望や方針を持たなくなってしまう』のです。
それでも成果が出ているうちは良いのですが、いったん逆風に見舞われると、現場を把握しきれない経営陣には、管理者にハッパを掛ける以外の方法が見つかりません。そして現場では、管理者が《経営者に掛けられたハッパ》を担当者に掛け直す形で、業績改善よりもハラスメント問題を引き起こしてしまうがちになるのです。
これでは、逆風に強い実行力は生まれるはずもありません。

5.優秀な人材がいないことが管理者不足の原因か?

では、中間管理者は“どのように鍛える”べきなのでしょうか。あるいは“どうすれば鍛えられる”のでしょう。その“イメージ”を抱きにくいためか、経営者の中には『わが社では優秀な人材を雇えないから、有能な中間管理者に育てるのは難しい』という言い方で、諦める人が少なくないようです。
しかし、実は“その考え方”が、組織を弱くしている、あるいは組織を強化する機会を失う原因になっているとも言えるのです。なぜなら良き中間管理者は、必ずしも飛び抜けて優秀な人材である必要はないからです。
自分の役割を理解することが中間管理者の最大要件で、その役割こそが、既に申し上げた“トップと現場の正確な中継基地になる”ことに他ならないということです。

6.先生方が社内で管理者研修を実施する現実的意義

ここに、組織力強化の支援者としての社会保険労務士事務所が、社内管理者研修を実施する意味が出て来ます。なぜなら社内で実施する管理者研修は、管理者への意識付けに留まらず、経営陣にも《管理者は中継基地である》という現実を突き付けることになるからです。
順風時には、現場の管理は管理者任せでも良いでしょうが、逆風時には経営陣が次のステップを示さなければ、困難克服は難しいでしょう。そして、その時経営陣が適切な判断を下すためには、順風時であっても、現場の状況を中継基地(管理者)を通じて把握しておかなければならないからです。
今、そんな経営陣と中間管理者の関係を意識し直さなければ、ハラスメント問題の解消どころか、事業業績の維持拡大も非常に難しい状況に陥りかねないでしょう。

関連教材ご案内

上記コラムの観点から、組織強化に向けて《管理者が果たすべき役割》を理解させるための社内研修を企画検討される際には、以下の教材をお役立てください。研修レジメや先生方向けの解説講座がセットになっています。
《現場管理者》教育セミナー実践キット

関連教材ご案内

管理者がパワハラを行わずに、部下を適切な厳格さを持って指導育成するためには、
パワハラ対策を起点にした社内マネジメントの方向転換が必要です。
詳しくは、以下のセミナーキット教材をご検討ください。
《ハラスメント対策》セミナー実践キットの概要ご紹介