単なる親しさや面談の多さだけでは《密接》な関係は生まれません。長年連れ添う家族でさえ、必ずしも密接な関係ができているとは言えないことさえあるからです。
ところが逆に《ある一点》の共有が始まると、時間や頻度に関係なく、経営者と社会保険労務士の先生方との間に《強い絆》が生まれ始めることが少なくありません。では、その《一点》とは…?

1.現代の《組織経営》を難しくしているもの…

現代組織は、その規模とは無関係に、経営や運営が難しくなっていると言われることがあります。なぜなのでしょうか。急いで結論に進むなら、その理由は《自己実現》あるいは《自分流》を《肯定的》に受けとめる風潮が、私たちの社会に定着して来ているからでしょう。
ひと昔前なら、そうした《我の強さ》は、組織内での自分を生き辛くさせるものでした。単純に、我の強い人は敬遠されたのです。それが今では、誰もが多かれ少なかれ《我の強さを発揮》し始めているわけです。
ただ、私たちは本来、協調性の強い国民性を持っているのではなかったのでしょうか。

2.我の強さは《自分の世界》を狭くしてしまう

確かに、私たちの社会の底流にある《協調性》や《集団意識》は、今も昔も変わらないかも知れません。しかし、それはしばしば、自分の居心地が良い小集団の中でしか生じにくくなっているのです。
つまり、自分にとって好ましい人が集まるグループでは、容易に献身的になれても、そこに、自分達にとっての《異種人》が入って来ると、とたんに敵対意識を持ちやすいということです。
その傾向の悪い側面は、学校の《いじめ》で顕著化しましたが、今や《大人》の間でも広がりを見せているます。
ただし、先に《悪い側面》と表現したように、全部が悪い面ばかりとは言えません。

3.自己実現や自分らしさを追求する為の戦い

なぜなら、自己実現や良い意味で自分らしい生き方を求めるなら、《我の強さ》は必須ですし、自分の我をある程度ではあっても出せるグループは《死守すべき場》になるからです。
『否、そんな激しい従業員はわが社にはいない』という経営者も少なくないでしょう。しかし私たちの《我の守り方》には、少なくとも3通りあるのです。その第1は、自分らしさを脅かす者と《直接戦う》ことです。しかし第2には、表立って戦わない代わりに陰で《言うことを聞かない》という戦術があり得ます。そして第3には《タイミング》をじっと待ちながら、《その時》に豹変するスタイルです。

4.3者に共通の《要注意ターゲット》とは?

ところが、この3つのスタイルに共通した傾向が1つあります。それは敵対意識のターゲットの選び方です。そして組織の中で《ターゲット》になりやすいのは、直属の管理者か、管理者を束ねる経営者でしょう。その理由は、自分に仕事を強要する権力を持つこと、すなわち《自分らしさを害する恐れが強い存在》だからです。
この《敵対意識》は、通常は心の奥に仕舞われますが、自分の存在が軽んじられたと感じる時、たとえば事業の窮地に際して、自分に犠牲を強いられたと感じるような時に目を覚ますのです。
一旦従業員の中に《敵対意識》が目覚めると、経営陣は《事業》と《社内》の両面での重荷を背負い込むことになります。そんな内憂外患傾向が、昨今、急速に企業を窮地に陥れる要因になっているとも言えそうなのです。

5.大切な社内人材を《敵》にしないために!

社外はともかく、社内の重荷は軽くしなければなりません。そして今や、そのための唯一の方法と言えるのが《ルールに基づく経営》だと言えるのです。命令者vs実行者は、まさに《ヒトvsヒト》の関係で、命令者の我が実行者の我を押さえつける状況に容易につながります。
ところが、そこに《ルール》があれば、命令者も実行者も《共に異なる立場でルールに従う》ことになるために、《対立関係》が弱くなるわけです。
我の強い現代人も、たとえば災害等に際しては、駅できちんと並ぶのが、今もなお大勢と言えます。順番を守るのが、私たちの《暗黙のルール》で、駅員も他の客もそれを遵守するという信頼感があるからでしょう。

6.臨機応変な経営より重要な現代型組織経営

臨機応変な《命令型経営》は、確かに柔軟にチャンスや問題に立ち向かい、効率よく成果を上げることができます。しかし、そのためには《命令が従順に受け入れられる》ことが大前提で、そのためにこそ、社内運営が、明示された規則や制度あるいは一定の方式による合意に基づいていることが不可欠なのです。
それは経営陣や管理者には《面倒》に見えるかも知れません。しかし現代意識の中では、《ルールを軽視した命令》こそが、面倒なトラブルや士気の低下に繋がっているとは言えないでしょうか。

7.ルール経営意識を経営陣と共有できれば…

この《命令型経営》から《ルール経営》への重点移行の重要性が、社会保険労務士の先生方と組織の経営陣との間で共有されるなら、そこに《密接な関係》が生まれないはずはありません。《密接な関係》どころか、社会保険労務士事務所は、組織経営にとって、なくてはならない存在として《意識》されるはずなのです。
しかも、そのために最も重要になるのは《戦略的なコンサルティング》ではなく、むしろきちんと規則を決め、必要なところから制度を作り、その規則や制度を《適切に運用する》指導や支援に他ならないのです。
経営陣の命令あるいは依頼が自動車だとすれば、規則や制度は道路です。自動車がなければ、行きたいところには行けませんが、道路が整備されていなければ、車(組織)は走れないのが現代なのです。
折に触れ、そんな意識付けを、事例として情報として助言として、経営陣に語るべき時に、今あるのだと思います。

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